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一般講演 P1-149

日本の絶滅危惧植物個体群の10年間の変遷―環境省版レッドリスト見直し調査の結果から―

*藤田卓(九大・理),小川誠(徳島県博),勝山輝男(神奈川県博),角野康郎(神戸大・理),川窪伸光(岐阜大・応用生物),芹沢俊介(愛教大・生物),高橋英樹(北大・総合博物館),高宮正之(熊本大・理),藤井伸二(人間環境大・環境保全),松田裕之,宗田一男(横国大・環境情報),横田昌嗣(琉大・理),米倉浩司(東北大・植物園),矢原徹一(九大・理)

レッドデータブック(以下RDB)は、絶滅危惧種の現状や個体群変遷を現す生物多様性保全の重要な基礎資料となる。しかし従来のRDBは定性的な調査に基づくことや、RDBの改訂にあたって調査対象種や手法が異なる等、絶滅危惧種の個体群の現状や変遷を明らかにするには限界があった。そこで本研究では2000年発行の全国版植物RDBと同じ方法を用いて、日本の絶滅危惧植物の現状および10年間の個体群変遷を明らかにすることを目的とした。

2000年に発行されたRDBは、日本全国の1665分類群の株数と減少率など定量的な情報を2万5千分の1地形図(以下メッシュ)毎に集め、世界で初めて絶滅確率に基づく定量的判定を優先的に採用したRDBである。本調査では、10年前の調査と同じ方法を用いて、527名の調査員の協力のもと約1950分類群の絶滅危惧植物の株数・減少率を取得した。

10年前と現在の株数を、メッシュ毎に比較した結果、現状維持のメッシュが多い(71%)ものの、増加したメッシュ(11%)に比べて減少したメッシュ(18%)の方が多く、絶滅危惧種全体でみると減少傾向が伺えた。地域絶滅したメッシュは全メッシュの6%を占め、10年前の株数が少ない方が絶滅しやすかった。減少率は各種の生育環境によって異なり、湿地および水域に生育する種は絶滅するメッシュの割合が高かった。発表では現在改訂作業を行っている新レッドリストの結果を加え、日本の絶滅危惧植物の現状について報告する。

日本生態学会