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一般講演 P1-160

ツルアジサイの更新過程

*金子洋平(新潟大院・自然科学),本間航介(新潟大・農)

ツルアジサイの更新戦略を明らかにするために、初期更新段階での生残過程、ホスト木選好性および分布と光環境の関係ついて解析した。実生発生および当年生実生のデモグラフィーを調べるために、林内の7種類の発芽床で種子の蒔きだし実験を行った。1歳以上の実生については、スギ林内とブナ林内に存在していた実生の生残を個体識別のうえモニタリングした。これらの調査結果から以下のことがわかった。1)実生発生率および当年生実生の生存率は基質間で大きく異なり、生存率は全体的に非常に低い。2)1年生以上の実生の生存率は基質の影響が見られず、生存率は比較的高い。3)倒木上のコケ、裸地、裸地上のコケが有力なセーフサイトである。4)セーフサイトは林内の面積比率ではわずか4%を占めるにすぎない。

調査プロット内のツルアジサイのホスト木ついて種名、サイズなどを調べたところ、ツルアジサイは、サイズの大きな樹木と広葉樹に多く登攀することがわかった。また、実生の匍匐距離を計測したところ、平均匍匐距離は約20cm程度であり、登攀成長するには樹木の根元に定着する必要があることが明らかとなった。広葉樹の根元には、針葉樹に比べてセーフサイトが高い確率で存在していたため、ホスト木として多く利用されていた。また、実生の定着確率は非常に低かったことから、長く生きた樹木が登攀される割合が確率論的に高くなることがわかった。

ツルアジサイが利用するホスト木周辺の光環境を3次元で測定し、ツルアジサイの分布との関係を調べた。ホスト木とホストでない樹木の光環境を比較した結果、相対光量子束密度はホスト木で高く、統計的な差も部分的に認められた。このことは、ツルアジサイの分布が光環境によって影響されている可能性があることを示唆した。

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