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一般講演 P1-161
ママコナ(ゴマノハグサ科)は、林床や林縁に生育する一年生の半寄生植物であり、いくつかの県においては希少種として報告されている。ママコナは送粉生態学の研究対象にはされてきたが、生活史解析の観点からは研究が行われていない。保全生態学的知見からも生活史を把握することは重要である。本研究は、一年生植物であるママコナ個体群が林床でどのようにして成立しているかを、成長特性の観点から明らかにすることを目的とした。
調査は、茨城県水戸市の管理された二次林林床に生育するママコナ個体群で行った。2006年4月22日に野外個体の異なる3つのサイズ(大、中、小)ごとに5個体を標識し、葉数及び茎長が各標識個体サイズに似た個体を約2週間ごとに10個体ずつ採取した。さらに、半寄生阻害個体として、4月9日に野外の実生を素焼き鉢に移植した(ポット個体)。定着したと考えられた5月13日から約2週間ごとにランダムに5個体を採取した。野外個体とポット個体の成長解析及び葉の窒素濃度の分析を行った。
大個体と中個体は開花したが、小個体とポット個体は開花しなかった。大個体のバイオマスはポット個体の10倍以上大きくなった。生育初期における大個体のRGRはポット個体よりも大きくなり、葉の窒素濃度も有意に高い値になった(大個体 4.0%,中個体 3.9%,小個体 3.4 %,ポット個体 2.2% ANOVA, p< 0.01)。大個体のRGRと葉の窒素濃度は生育初期において最も高くなり(RGR 0.145g/g/day ; 窒素濃度 5.0%)、その後減少する傾向がみられた。これは、林床の相対光量子密度の季節変化と一致した。以上の結果より、林床が暗くなる前の生育初期において、ママコナが急速に成長するためには、ホストに半寄生することが必須であることが示唆された。