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一般講演 P1-162

高知県室戸市におけるカミガモソウの生活史,生育環境および過去3年間の動態

*三宅 尚, 中川 赳, 和田久美子, 石川愼吾(高知大・理), 三宮直人(茨城大・院・理工)

高知県室戸市の湿地(0.7ha,標高約520m)において,ゴマノハグサ科の1年草で日本固有種であるカミガモソウの生態を解明するため,04―06年に,植物群落の種組成と本種の生活史および生育環境を調べた.

<群落型>TWINSPANにより湿地内の植生を,カミガモソウ群落を含む20の群落型に分類した.最も面積の大きい群落はカサスゲ群落で,他にショウブ群落,オオハリイ群落などが存在した.

<カミガモソウ群落の動態>04年の群落面積(パッチ数)は202.0m2(61)であったが,06年には130.2m2(49)に減少した.消失した群落は主にミズタマソウ―ニガクサ群落とカサスゲ―シロバナサクラタデ群落に移行した.

<生活史>本種は4月中旬以降に芽生え,10月に主茎長が10―20cmと最大となった.開花期は7―10月で,主茎の伸長とともに増加した葉の葉腋に花をつけた.8月以降,下部の花から順次,結実し,9―11月に多量の種子を散布した.

<生育環境>カミガモソウ群落は湿地縁辺の樹冠下に分布していた.定点観測(05年)では相対光量子密度が20%を超えることは稀であった.平常水位は約−3cmであったが,3週間以上水位が20cmを超えることもあった.冬期を中心に,湿地縁辺に沿って動物による地表撹乱が多数生じた.

<まとめ>湿地縁辺は光環境が相対的に悪い上,水位変動が激しく地表撹乱の頻発する不安定な立地である.本種は耐陰性が比較的強く,冠水や埋没にもある程度耐性があると推定される.本種が4月中旬以降に芽生える小型の1年草で,地表撹乱のなかった群落の一部が多年草を主とする別の群落に移行したことから,冬期における動物の地表撹乱が本種の生育地の形成と個体群維持に重要な役割をもつことが示唆される.

日本生態学会