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一般講演 P1-165

埋土種子集団を形成・維持する植物の生態的特性についてのメタ解析

本田裕紀郎(東大・院・農学生命科学)

明瞭な実証データは得られていないものの、種子の休眠により埋土種子集団が形成・維持されると考えられてきた。埋土種子集団の形成・維持に対する休眠の役割として、「形成可能性」(永続的埋土種子集団を形成できるか否か)および「永続可能性」(永続的埋土種子集団を土壌中で長期的に維持できるか否か)に対する寄与が想定される。本講演では、形成可能性と永続可能性を明瞭に区別した上で、信頼性のより高い一般則を得るための試みであるメタ解析を行うことにより、そのそれぞれに対して休眠は不可欠ではないもののその寄与は休眠タイプによって異なること、そしてそれらと強い相関が示唆される植物の特性を報告する。

そのメタ解析においては、土壌中での種子寿命および比較生態学における既存のデータベースを統合して、休眠タイプごとに形成可能性および永続可能性に関する指標値を統計的検定により比較した。さらに、その値を目的変数として、21項目からなる植物の特性を説明変数として、回帰樹木により強い相関が示唆される植物の特性を抽出した。解析の結果、休眠は埋土種子として土壌中で数年間永続することに寄与していると考えられるものの、埋土種子集団の形成には不可欠ではなかった。しかし、それぞれの休眠タイプにおいては、後熟もしくは温度の日較差により解除される休眠をもつ種の形成可能性および永続可能性は有意に高く、熱帯以外の大部分の地域で一般的な低温湿潤処理により解除される休眠をもつ種ではいずれも低かった。物理的休眠においては、永続可能性を高めるものの、形成可能性への寄与は認められなかった。加えて、理論研究や幾つかの実証研究が示すように、生活史(個体の寿命の短さ)と散布体の重量は、埋土種子集団の形成可能性との強い相関が存在することが示された。

日本生態学会