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一般講演 P1-166
ササは寿命の長い一回繁殖型植物であり、60〜100年ともいわれる長期間の地下茎による栄養成長の後に、広範囲にわたって一斉に開花して、枯死するという生活史特性をもつ。そのため、ササの開花に関する研究はササの生活史を明らかにするうえで重要である。しかし、ササの開花、結実はまれにしか見られない事象であるため、開花、結実を詳しく調べた研究はほとんどない。そこで本研究では、最近京都市で開花したチュウゴクザサ(Sasa veitchii Rehdar var. hirsuta)を対象にして、広範囲の視点と詳細な視点から見た場合の開花、結実の生態的特性を把握することを目的に調査を行った。広範囲の調査に関しては、京都市全域を対象にして自動車道沿いのチュウゴクザサ群落の緯度、経度と開花状況を記録した。詳細な調査に関しては、京都大学フィールド科学教育研究センター・北白川試験地と上賀茂試験地で行った。北白川試験地では、チュウゴクザサ群落から稈を無作為に30本選択し、2、3日おきに開花している花の数と結実している種子の数を測定した。上賀茂試験地では種子が結実したころにチュウゴクザサ群落内に1m×1mのコドラートを設置し、コドラート内のササを地際から刈り取って稈の高さ、花序の数と高さ、花の数、種子の数を測定した。調査の結果、広範囲で見てみると個体群ごとに開花する年に若干のずれはあるものの、開花の同時性は強いことが明らかとなり、開花期になると数年のうちに一地域内のチュウゴクザサ群落の多くは開花して枯死してしまうと考えられた。開花を迎えた個体群を見てみると、受粉効率を高めるための性質と2回目の開花を行うことができる性質をもち、一生に一度の繁殖期を成功させるための戦略を備えていることが示唆された。