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一般講演 P1-168
樹木における葉量の年次変動は、当年枝や繁殖器官に分配可能な光合成産物量の年次変動を引き起こす可能性がある。葉量は枝の量と関わるので、過去の枝の量を推定できれば、葉量が当年枝長や繁殖器官数に及ぼした影響を議論できるかもしれない。
アオモリトドマツの樹冠上部において、枝の量の指標として先端部数年の主幹伸長量(以下「積算主幹伸長量」)を用い、過去の年次ごとに積算主幹伸長量に対する当年枝長、球果数の依存性を解析した。積算主幹伸長量は、当年枝・球果の出現2年前(葉芽・花芽形成1年前)までの年次を対象とした。積算主幹伸長量と枝の量との関係は、1993年時点について解析した。当年枝長や球果数は1977年から1990年までの期間を対象とした。当年枝は主幹と一次枝主軸を用いた。一次枝主軸は主幹から分枝後2-6年目の部分それぞれを対象とした。球果は、一次枝主軸上で、主幹から分枝後2-10年目の部分に存在したものを用いた。解析した個体は八甲田山における林冠木14個体である。
積算主幹伸長量と枝の基部面積合計値との間には、5年間以長の期間に出現した枝とそれ以上の位置にある主幹の長さで高い相関があった。以下の解析結果は、5年間および7年間の積算伸長量をもとに計算している。
当年枝長と積算主幹伸長量との関係は、当年の主幹の場合と一次枝主軸の場合では異なっていた。当年主幹長は球果生産翌年の数例を除いて積算主幹伸長量と正の相関があったのに対し、一次枝主軸長は概して相関が低かった。
球果数と積算主幹伸長量は、最大の豊作年を含む2、3例において正の相関があった。
枝の量と葉量にアロメトリックな関係があるとすれば、当年の主幹伸長量は一次枝主軸伸長量や球果数に比べて樹冠上部の葉量の影響を受けやすいことが示唆される。