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一般講演 P1-176
同属内の近縁種が同所的に生育する場所では花期が重なる種や花期が著しくずれている種が知られている。同属内の近縁種間の開花フェノロジーは主に形態的要因(花、花序)と生態学的要因(交配様式、訪花昆虫等)に影響されていると考えられる。
金沢大学角間里山地区にはガマズミ属4種(ミヤマガマズミ、コバノガマズミ、ガマズミ、ヤブデマリ)が同所的に生育している。2005,2006年にそれらの開花フェノロジーと交配様式を調査した。2005年には野外に生育する4種各20個体、2006年はヤブデマリを除く3種各40個体を識別し、開花状況を毎日記録した。交配様式を明らかにするために花序を単位とした袋掛け実験(強制他家授粉、強制自家授粉、自動自家授粉、コントロール)を行った。2006年では、ヤブデマリを除く3種のP/O比を調査した。
両年ともミヤマガマズミ、コバノガマズミ、ヤブデマリ、ガマズミの順で開花した。ミヤマガマズミ、コバノガマズミ、ヤブデマリは開花時期の一部が重複したが、ガマズミは他3種の開花と全く重ならなかった。ミヤマガマズミの2006年の開花初日は2005年のそれより10間遅かった。これは2006年4月の気温が2005年4月の気温に比べて低かった(金沢地方気象台)ためと考えられる。それにもかかわらず、両年ともミヤマガマズミとコバノガマズミの開花ピークのずれは4日であり、開花持続期間はそれぞれ約31日間と約20日間であった。
袋掛け実験の結果は、ミヤマガマズミ、ガマズミは自家不和合性、コバノガマズミは自家和合性を示した。ミヤマガマズミ(60800±25100)、ガマズミ(59100±22100)、コバノガマズミ(74900±26700)のP/O比は3種間で差が見られた(F2,347= 13.2, P < 0.001)。