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一般講演 P1-177

食われた果実は落とすのか?―ヤマモモ樹上果実と落下果実における食害率の比較―

*藤田真梨子,松井淳(奈良教育大学),寺川眞理(広島大学),駒井古実(大阪芸術大学),湯本貴和(総合地球環境学研究所)

植物の親個体にとって、しいなや食害を受けて成熟が望めない種子に投資を続けることは資源の損失となる。多くの植物は、そのような質の悪い種子を中絶することにより資源の無駄をなくし、健全な種子をより多く残すと考えられている。調査対象であるヤマモモ Myrica rubra は常緑高木で液果を実らせる。これまでの研究から、ヤマモモは種子捕食者であるヤマモモキバガ Thiotricha pancratiastis により大きな被害を受けていることがわかっている。ヤマモモは食害を受けた果実を中絶するのだろうか?本研究では、落下果実と樹上果実における食害率の比較からヤマモモにおける選択的中絶の可能性を検証した。

調査は屋久島西部林道付近において2006年4月〜6月の登熟期間に行った。調査区内のヤマモモ6個体の樹冠下にシードトラップを設置し、週に1回の間隔で合計11回落下果実を採集した。また4月上旬、5月中旬、6月上旬・中旬の計4回、ヤマモモ3個体に梯子を用いて登り、樹上果実を採集した。落下果実では1個体につき60個、樹上果実では1個体につき30個を採集後ただちに切開し、食害の有無を調べた。

調査期間を通じ落下果実は6122個採集し1793個を切開、樹上果実は365個を採集し270個を切開した。落下果実の食害率は4月末〜5月中旬で高く、多くの個体で90%を上回っていた。一方、樹上果実の食害率は多くの個体で10%を下回り、最高でも19%であった。両者の差は統計的に有意であった。これらのことから、樹上には健全な果実が残されており、落下した果実は大半が食害されていたことがわかった。

日本生態学会