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一般講演 P1-179
方法)京都市近郊のコナラ二次林の林道700mに生育するコバノミツバツツジを対象に、開花期と自家和合性の個体間変異を調査した。林道沿いで120個体をランダムに選び、開花を開始した日を記録。次に60個体を選び、花芽を袋掛けし、自家/他家花粉を付ける受粉実験を行い、自家和合性の程度を調査。同時に、自然状態に置かれた花芽の結果率を記録した。
開花期)開花を開始した日は、個体間で最大19日のずれが認められたが、大多数の個体は同調的に開花した。そのため、集団内での、開花を開始した日の頻度分布は一山型となった。また、早咲き個体は遅咲き個体に比べ、自然状態の結果率が低かった。他家花粉による結果率は、開花期によらず同等に高かったため、早咲き個体ほど花粉不足が強く起こっていると考えられる。早咲き個体の開花期は早春であるため、低温でポリネーターの活性が低いのかもしれない。
自家和合性)自家和合性の程度は、個体間で大きな変異が認められ、自家花粉による結果率が0―20%と低い個体と、80−100%と高い個体がほぼ同数、集団内に存在した。そのため、集団内での、自家和合性の頻度分布は二山に分化する傾向が認められた。また、自家和合性の高い個体ほど、自然状態の結果率が高かった。自家和合性の高い個体では、自殖が高頻度に起こっていると推察される。自家和合性の個体間変異は、生育環境や生育段階の違いではなく、遺伝的な形質の違いを反映しているのかもしれない。例えば、劣勢有害遺伝子の保有数や、生理的な自家不和合システムを発現する遺伝子の有無などが考えられる。というのも、自家和合性の高い個体と低い個体は空間的に混在して生育しており、また、前年の受粉実験で自家和合性が高いと判断された個体は、当年の受粉実験でも自家和合性が高かったためである。