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一般講演 P1-185

キスゲとハマカンゾウでは花粉管の伸長パターンが異なる-雑種形成を制限する要因となるのか?

*安元暁子, 新田梢, 矢原徹一

花粉管の伸長速度は花粉管と花柱の相互作用によって決まると考えられている。近縁な種間で送受粉が生じた場合、花粉管と花柱の相互作用が変化し、その変化が種間の生殖隔離に寄与する可能性がある。この可能性を検討するために、キスゲ属植物のキスゲとハマカンゾウを用いて受粉実験を行った。

キスゲまたはハマカンゾウの花の柱頭にキスゲ花粉とハマカンゾウ花粉を人工受粉し(非競争条件)、6、12、24時間後に子房のすぐ上で花柱を切除するか切除せずに放置して、発達を始めた果実を記録した。ハマカンゾウの花の結果率は、ハマカンゾウ花粉処理でのみ時間と共に(6、12、24時間、切除せず、の順に)増加し、常にキスゲ花粉処理における結果率を上回っていた。キスゲの花の結果率は、どちらの花粉処理でも時間と共に増加したが増加の傾きがハマカンゾウ花粉処理でより大きく、受粉後12時間放置した場合はハマカンゾウ花粉処理よりもキスゲ花粉処理で高かったが、切除せずに放置した場合はキスゲ花粉処理よりもハマカンゾウ花粉処理で高かった。

これらのことから、キスゲの花粉管はどの花粉管も比較的速く伸長するが、ハマカンゾウの花粉管は伸長が速いものから遅いものまで連続的な変異あること、また、両種の花粉ともこの伸長パターンは異種花柱内でも維持されるが、同種花柱内の場合に比べて速度が遅くなることが明らかになった。どちらの種の花柱内でも、受粉12時間後には、同種花粉管の方が異種花粉管よりも速く子房に到達しており、2種の花粉が混ざった状態で受粉が起こった場合には、”同種花粉の優先性”が生じ、生殖隔離として機能することが示唆された。

日本生態学会