| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P1-189
トチノキの両性花は子房が3室に分かれ、胚珠は各室に2個ずつあるので、胚珠がすべて成熟した場合には、ひとつの果実に6個の種子が入る。 実際にトチノキの種子はひとつの果実に1個の場合が多いが、時には2個まれに3個以上の種子が入っている。果実あたりの種子数にどのくらい変動があるか、京都大学芦生研究林のモンドリ谷16haとその周辺に生育するトチノキ、島根大学構内に植栽されたトチノ キでの結果を報告する。樹冠下に設置されたトラップ、あるいは地面に落下した種子と果実を採取し、種子の場合はその形状から果実のなかで何個入っていたかを判断した。種子が2個以上入っている場合、その果実を多胎果実とよび、種子数全体に占める多胎果実由来の種子の割合をもとめた。
豊作であった1997年の多胎果実由来の種子の割合は、種子数の少ない個体を除いた13個体で平均19%、標準偏差13%、範囲は6から46%であった。モンドリ谷全体で生産された種子における割合は15%であった。並作の1999年には、11個体の平均15%、標準偏差10%、範囲は2から34%であった。隣接する小谷での2002年の結果は、4個体の平均13%、標準偏差10%、範囲は6から26%であった。島根大学構内の2006年の調査では、多胎果実由来の種子の割合が59%の個体があったが、多胎果実をほとんどつけなかった個体もあり、4個体の平均20%、標準偏差27%であった。多胎果実由来の種子の割合が高い場合、種子が3個以上の多胎果実の割合も高くなった。モンドリ谷の個体について、多胎果実由来の種子の割合の1997年と1999年との関係をみると、相関係数は正の値を示したが有意ではなく、個体によって多胎果実由来の種子の割合は年ごとに変動するとみられた。