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一般講演 P1-190

コナラ・ミズナラの雄花序および堅果の成熟前落下パターンと豊凶の関係

小谷二郎(石川県林業試験場)

コナラ・ミズナラは、クマの餌資源として重要とされ、異常出没前に早期に豊凶を予想することが求められている。しかしながら、堅果の発達は8〜9月と遅く、異常出没の直前にならないと着果度調査が実施できない。ナラ類は、4月に開花後、5月から6月に雄花序および受粉に失敗した雌花序を脱落させ、7〜8月に発育不全の未熟堅果を脱落させる。とくに、未熟堅果の落下数が非常に多いのが特徴である。そこで、この研究では雄花序や雌花序および未熟堅果に着目し、これらの落下パターンと豊凶の関係を2年間調査し、豊凶に関係する要因を検討した。その結果、開花数が多い林分ほど春先の未受粉の雌花序落下率が減少し、健全堅果率が高くなる傾向が示された。その傾向は、2年間の比較でもみられ、前年より開花数が増加するほど春先の雌花序落下率が下がり、成熟堅果率が増加する傾向があった。また、8月中の未熟落下率が高い林分ほど成熟堅果率は低くなる傾向があったが、前年との比較では8月中の未熟落下率が増加するほど成熟堅果率は増加する傾向があった。以上のことから、堅果の豊凶は春先の開花数が関係し、前年に対する開花数の多少がその年の受粉効率や堅果の発達に影響を与えると考えられた。トータルの雌花序(未受粉の雌花序+未熟堅果+成熟堅果)および成熟前の雌花序(未受粉の雌花序+未熟堅果)の落下数の積算値の推移は、ロジスティック曲線に適合した。開花数(K)は雄花序数から、初期落下速度(r)は春先の雌花序落下率から推定可能であった。

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