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一般講演 P1-191
花食害者と訪花昆虫は、植物の繁殖に大きな影響を与えている。しかし多くの研究では、食害量を調べるだけで、花が食害を受ける時期(つぼみ期・開花期・果実期)や、異なる時期に受けた食害の繁殖への影響の違いはあまり調べられてこなかった。また、開花時期が食害を受ける時期に与える影響は調べられてこなかった。もし、食害を受ける時期によって繁殖への影響が異なると、開花時期が繁殖へ与える影響を評価するには、食害量の影響だけではなく、食害を受ける時期の影響も考慮する必要があるのではないだろうか。
本研究では、つぼみから果実の成熟中まで花に食害を受けるヒメシャガを用い、それぞれの時期に受けた食害の、繁殖への影響の違いを明らかにする。さらに、開花時期が異なると、訪花量や食害量だけではなく、食害を受ける時期も異なるのかを明らかにする。
宮城県仙台市の青葉山に2つのプロットを作り、2005年と2006年にプロット内のすべての花の開花日と、その花が開花・受粉・結実したか、つぼみ・花・果実に食害を受けたかを記録した。
つぼみに食害を受けると開花率が下がり、果実の成長中に食害を受けると結実率が下がった。しかし、開花中に食害を受けても受粉や結実はあまり影響を受けなかった。また、開花時期が異なると、結実率や食害率が異なるだけではなく、つぼみ期・開花期・果実期に受ける食害の相対的な割合が異なっていた。また、その傾向は年やプロットによって異なり、一貫した傾向は見られなかった。
本研究より、開花時期が繁殖に与える影響を評価するには、食害量や訪花量の違いだけではなく、食害を受ける時期の違いも考慮する必要があることが示された。