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一般講演 P1-193
樹木の種子生産様式は、花芽形成時期の気象条件だけでなく、光、水分、土壌養分の資源量の影響を受けることが予想される。本研究では窒素資源の異なる林分において伐採によるギャップ形成を行い、光と土壌窒素資源の違いがヒノキの種子生産に及ぼす影響を明らかにした。京都市内のヒノキが優占種となっている二次林において斜面上部から斜面下部にかけてギャップ区と対照区を3ヶ所ずつ設定した。2000年1月に伐採を実施して、斜面上部に位置する1ヶ所は900m 2、残りの2ヶ所は600m 2のギャップを形成した。2000年7月から各調査区で6年間にわたってヒノキ種子生産量を測定した。全調査区において奇数年は豊作、偶数年は凶作を示した。豊作年には種子重と種子窒素濃度が高い傾向があり、豊作年に質の高い種子を生産していた。ギャップ形成の有無、土壌の窒素無機化速度、年の3要因を説明変数として重回帰分析を行った。土壌の窒素資源量が大きいほど個体あたりの種子生産量と種子重が増大する傾向がみられたが、種子窒素濃度では有意な関係はなかった。ギャップ区では対照区よりも種子重は小さくなるが、種子窒素濃度にはギャップ形成による影響が見られなかった。以上の結果、本調査地では土壌の窒素資源が多いほど充実した種子を多く生産すると考えられた。ギャップ形成による光資源の増加は種子サイズを減少させる影響があると考えられた。種子窒素濃度は種子サイズと有意な正の相関がある一方で、光資源に対する反応は種子サイズとは異なっており、樹木の窒素利用様式による影響が示唆された。