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一般講演 P1-196
落葉広葉樹における光馴化能力を明らかにすることを目的とし,異なる強度で被陰され,
馴化が完了した落葉広葉樹8種について,相対PPFDと解剖学的構造および光−光合成特性の関係を調べ,その結果に基づき樹種ごとの馴化能力について考察した。
供試樹種はブナ科のミズナラ,コナラ,クリ,ブナ,カバノキ科のシラカンバ,ミズメ,モクレン科のコブシおよびニレ科のケヤキである。相対PPFDが42.5%,16.6%,7.4%の被陰区,100%の対照区の4試験区で2〜3年育成した苗木から健全な葉を7枚選定し,携帯式光合成蒸散測定装置を用いて葉面積当たりの純光合成速度を3〜5回測定した。測定温度は20゚C,二酸化炭素濃度は400ppmで,照射光は弱光から強光に光強度を段階的に変化させ,照射光のPPFDと純光合成速度の関係をプロットして非直角双曲線式で近似した。非直角双曲線式のパラメータである曲率(θ)と飽和光合成速度(Psat)を求め,光−光合成特性の指標とした。また,光−光合成特性の測定を行った葉を採取して柵状組織の厚さを測定し,解剖学的構造の指標とした。
相対PPFDの変化に対する柵状組織の厚さ,θおよびPsatの変化型を類型化し,陰葉化したさいの陽葉の値に対する変化率を求めた。変化型を被陰に対して解剖学的構造,光−光合成特性の性質を変えやすいかの目安,変化率を陰葉化したさいの解剖学的構造,光−光合成特性の可塑性の目安として被陰に対する光馴化能力について考察した。
その結果,ブナを除くブナ科の樹種,カバノキ科の樹種などで馴化特性が類似しており,本研究では,被陰に対する光馴化能力において,科による共通性が認められた。また,個々の樹種については,ブナ科の樹種であるミズナラ,コナラ,クリの馴化能力が高く,特にミズナラの能力が高いことが明らかになった。