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一般講演 P1-201
河川の水位変動に伴って乾燥と浸水が頻繁に繰り返される砂礫堆においてネコヤナギは生育する.基質の水分条件がネコヤナギのシュート成長および水分生理に及ぼす影響を解明するために,乾燥区,滞水区,流水区,対照区の4つの水分条件下で育成したさし木苗のシュートフェノロジーと葉の水ポテンシャルを測定した.乾燥区の苗では基質の体積含水率が約4%になるとシュート成長がほぼ停止し,新たな展葉はほとんどみられなかった.滞水区では基質の酸化還元電位(Eh)の低下に伴い苗のシュート成長がほぼ停止した.一方,流水区ではEhが高く,苗のシュート成長が持続した.根圏が常時浸水していても嫌気状態でなければ,苗の成長は抑制されないことが示された.滞水区と流水区の苗には通気組織が形成されたため,浸水状態では基質の酸素条件に関係なく通気組織を発達させて呼吸を行うものと考えられる.夜明け前の水ポテンシャルは乾燥区の苗で最も低く,他の処理区の苗よりも強い水ストレスを受けていた.葉の水分特性値に処理区間で差は認められなかった.膨圧を失うときの相対含水率(RWCtlp )は全処理区で0.58−0.68と低かった.ネコヤナギのシュートは,乾燥状態を経験しても浸透調節を行わず,低いRWCtlpによって乾燥に耐えることが示唆された.RWCtlpの低さや水分条件に応じたシュートの成長様式の変化,さらに通気組織の形成によって,ネコヤナギは乾燥と浸水が交互に生じる立地に生育できるのであろう.