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一般講演 P1-203

一年生草本シロザの繁殖期における炭素・窒素経済と葉の老化

*安村有子(森林総研),彦坂幸毅(東北大学)

多くの一年生草本は、シーズンの終わりに開花・結実する。繁殖器官の成長に必要な炭素は葉の光合成によって供給し、また窒素は主に葉に含まれる窒素化合物を分解・回収して利用するとすれば、これらの植物では繁殖成長が葉の老化の進行に影響を与えると考えられる。本研究ではポット栽培したシロザの個体を、開花後に(1)コントロール、(2)繁殖器官の全切除、(3)托葉の全切除、の三処理に分け、繁殖期の器官間の炭素・窒素の分配と20番目の葉の光合成能力、窒素含量の時間変化について調査した。本葉の葉柄基部からでる托葉は、処理時において本葉の63%に相当する乾燥重量と70%相当の窒素を持っていた。

繁殖器官を切除した個体では、コントロール個体に比べて、葉や托葉の乾燥重量と、茎の窒素濃度が増加した。従って、過剰な炭素はそのまま光合成器官に蓄積する一方、窒素は光合成器官から回収されて茎に蓄積していたと考えられる。20番目の葉では、老化に伴う窒素含量の減少が緩やかになる傾向がみられた。窒素あたりの光合成速度は減少しており、炭水化物の蓄積による光合成のフィードバック阻害が起こったことが示唆された。一方、托葉を切除した個体では、葉や茎の炭素・窒素含量には大きな影響が現れなかったが、繁殖収量が23%減少した。従って托葉は本葉の補足的な光合成器官として働いていたと考えられる。これらの個体では20番目の葉の光合成がコントロール個体よりも高めになっていた。托葉除去による損失を補填するために本葉で光合成の促進が起こった可能性が考えられる。

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