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一般講演 P1-210

地下水位の変動がウラジロハコヤナギの成長に及ぼす影響について

*今田省吾,山中典和,玉井重信(鳥取大・乾燥地研)

乾燥地域の生態系において、地下水が水収支に果たす役割は重要である。降雨の少ないこの地域では、地下水位の高低が土壌水分を決定する大きな要因であり、それによって植生が大きく変化する。また、地下水位は季節的に変動し、各々の植物の定着・成長に影響を及ぼす。乾燥地域の植物は、このような地下水位の変動に順応・適応しており、特に樹木は長年にわたり順応性を発揮して生育している。

中国の乾燥地域に生育する樹木であるウラジロハコヤナギ(Populus alba L.)は、地下水位の比較的高いところに生育している。本研究の目的は、地下水位の変動がP. alba苗木の成長に及ぼす影響を生理生態的に解析することにより、水位変動に対する順応性・適応性を明らかにすることである。

実験は、鳥取大学乾燥地研究センターのビニールハウス内において、60 Lポットを潅水用パイプで連結した簡易の地下水位変動システムを用いて行った。各ポットには、深さ45 cmまで砂丘砂を充填し、1年生苗木を植栽した。地下水位は、土壌表層から深さ45 cmに固定、45 cmと30 cmを変動、及び45 cmと15 cmを変動の3段階に設定した。これらの処理は、2006年6月23日から8月23日の2ヶ月間に渡って行った。水位変動は、15日間隔で水位を設定した高さに調節した。

本実験では、全ての処理区において苗木の地上部の成長量および現存量が同程度であった。また、昨年の実験により、45 cm固定および45cm-30 cm変動条件下において、処理1ヶ月後の苗木の総根長および総現存量が同程度で、根の垂直分布が明らかに変化した結果を得ている。以上の結果より、本実験で設定した水位変動条件下において、P. alba苗木は根の垂直分布を変化させることで水位変動に対応する能力を有していると推察される。

日本生態学会