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一般講演 P1-215

CO2濃度の変化がポプラの葉の解剖学的特性に与える影響-個体におけるシステミックな制御-

宮沢真一(RITE),N.J.Livingston(Univ. of Victoria)

植物を高CO2濃度下で生育させると、葉の気孔密度や気孔指数(=全表皮細胞数に対する気孔数の割合)が減少し、葉の厚さが増加する傾向がある。このような葉の解剖学的特性の変化は、葉の光合成や蒸散にも影響を与える。近年、シロイヌナズナを用いた研究から、若い成長中の葉の気孔密度は、成長中の葉が置かれCO2濃度よりも、下位にある成熟葉が置かれたCO2濃度に影響を受ける事が明らかになった。これは、成熟葉がCO2を感知し、何らかの情報伝達物質を介して、若い葉の気孔数を制御している事を示唆する(システミック制御)。しかしながら、葉肉組織の厚さなど、他の解剖学的特性についても同様なCO2応答機構が存在するのか明らかではない。そこで、ポプラ(Populus trichocarpa x P. deltoides)の苗木を用い、若い葉、及び成熟葉が置かれたCO2濃度を、それぞれ独立に制御するシステムを構築した。若い葉と成熟葉は、外気CO2濃度(360 ppm)、または、高CO2濃度(720 ppm)下で生育させた。面積展開が終了した若い葉について、表皮のレプリカを採取し、また、葉の一部を樹脂包埋して、これらの顕微鏡用スライドを作成した。画像解析により計測した気孔密度と表皮細胞密度から気孔指数を求め、同様に、柵状組織、海綿状組織、表皮組織のそれぞれの厚さを計測した。その結果、若い葉が置かれたCO2濃度に関わらず、成熟葉が置かれたCO2濃度の上昇に伴い、若い葉の気孔指数は減少し、一方、表皮細胞密度、表皮組織と海綿状組織の厚さは増加した。対照的に、柵状組織の厚さは若い葉が置かれたCO2濃度の上昇にのみ反応し、増加した。以上の結果は、CO2濃度上昇に伴う葉の解剖学的特性の変化において、葉の組織により、そのCO2応答機構が大きく異なる事を示唆した。

日本生態学会