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一般講演 P1-218
低緯度地帯にみられる熱帯域の山地林は, 一年を通して比較的多湿恒温で, 多くの植物種が同所的に生育している. そこではまた, 植物の生活形も多様であり, これらの生活形は形態特性やその生活の方法を反映していると考えられる. 本研究ではこの点に着目し, 閉鎖林冠下において様々な生活形に属する植物の葉寿命と個葉特性との比較を行ない, 葉寿命がどのような要因によって決定されているのか, そして, 閉鎖林冠下において葉寿命がどのように分布しているのかについて検討を行った. 調査はインドネシア・西ジャワ州ハリムン山国立公園の熱帯性山地林(標高 1,100 m)で行った. 閉鎖林冠下で, 様々な生活形(木本稚樹, 草本, つる植物, 着生植物)に属する植物104種を調査対象とし, 2002年から2005年にかけて, 毎月個葉フェノロジーの調査を行った. さらに, 同種個体から個葉を採取し, LMA(Leaf Mass per Area, g/cm2), 平均葉面積, 窒素含量, 防御物質(総フェノール量, 縮合型タンニン量), 硬度, 食害率を測定した. 葉寿命と個葉特性との関係を生存時間解析によって算出し, これをもとに推定葉寿命を求めた.
個葉の生存解析の結果, 様々な葉の性質の中で, LMAは葉の生存に最も強い正の効果を持っていた. 推定葉寿命については, 樹木と草本との間に違いは見られなかった. ついで着生植物, つる植物が長い葉寿命を示した. 葉寿命と個葉特性との関係を比較したところ, 同じ寿命の場合, 樹木では高いLMAが, つる植物では低いLMAがみられた. このことから, 異なった生活形では葉の質と葉寿命との関係性が異なっており, LMAという単純な指標によって葉寿命を推定することはできないことが示唆された.