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一般講演 P1-220

葉脈遮断および塩化水銀処理した葉の気孔反応

*原山尚徳,石田厚(森林総研)

樹木の通水性は葉へ水分供給能力と密接に関係しており,気孔コンダクタンスや光合成を制限する。近年,根や幹の通水性と同様に,葉の通水性の変化も気孔の開閉に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。葉内の通水経路は大きく二つの経路,すなわち葉脈内の道管を通る経路と道管内から葉の細胞間隙へと流れる経路に分けられ,前者は水路的役割を果たしていると考えられる。また,葉脈道管中の水が葉細胞へ流入する際には細胞膜を通るが,細胞膜を通る水ほとんどがアクアポリンと呼ばれる膜タンパク質を通ることが明らかとなっている。本研究では,葉脈とアクアポリンそれぞれの通水経路を阻害した時の葉の通水性および気孔コンダクタンスの影響を明らかにすることを目的とし,生活型の異なる常緑広葉樹のアラカシ,落葉広葉樹のコナラ,ツル植物のクズについて比較した。

葉脈を異なる3つのパターンに切断・接着処理することによって葉脈内の通水を遮断し,未処理の葉とともにそれぞれの葉の通水コンダクタンスや気孔コンダクタンスを測定した。また,採取したシュートに塩化水銀(II)溶液を吸収させることによってアクアポリンの通水を阻害し,制御環境下で葉の通水コンダクタンスや気孔コンダクタンスの変化を調べた。

葉脈遮断した場合,3種ともに気孔は閉鎖し,葉の通水コンダクタンスと気孔コンダクタンスの低下の割合はほぼ1対1の関係にあった。一方,アクアポリンを阻害した葉では,葉脈遮断した葉と同様に気孔は閉鎖したが,葉の通水コンダクタンスよりも気孔コンダクタンスの低下の割合が大きく樹種間差も認められた。こうした結果から,葉脈とアクアポリンの通水性変化が気孔の開閉に与える影響は異なっていると考えられた。また,アクアポリンの量・活性には樹種間差があり,この差がそれぞれの樹種の気孔特性や水利用特性と関連している可能性が示唆された。

日本生態学会