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一般講演 P1-224
イネ科の草本植物は冷温帯から亜熱帯まで世界中に分布しており、日本を含む東アジアにも多くの種が分布している。イネ科草本植物には異なる光合成型(C3型、C4型、C3-C4中間型)があることが知られている。光合成は植物の生長や生存に関わる重要な因子であることから、イネ科草本植物の分布パターンには光合成型が大きな影響を与えている。東アジア地域に多いイネ科草本植物の光合成型分類は解剖構造やCO2補償点を用いて行われており、炭素安定同位体比はほとんど用いられていない。炭素安定同位体比は水利用効率などの機能も反映しており、分布環境や生育型などと関連づけることによって、分類だけでなく生態生理やそれに基づいた利用・管理の重要な情報を提供できる。本発表では、1931年から2003年までに日本を中心とした東・東南アジア8カ国で収集されたイネ科草本植物のさく葉標本を用いて、6亜科、144属、429種について、炭素安定同位体比を分析することによって光合成型の分類を行った結果を報告する。237種がC3型、192種がC4型と分類され、炭素安定同位体比の平均値はそれぞれ-29.2パーミル、-12.3パーミル であった。このうち日本に分布する261種について文献により分布域を北海道、本州、九州、沖縄に分類したところ、温暖になるほどC4型の比率が高くなった。C3型とC4型は生育地にも違いがあり、C3型はC4型と比べると湿潤地や半陰地により多くみられた。特に沖縄に分布するC3型39種については生育地が湿地帯に偏る傾向がみられた。