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一般講演 P1-225
葉の展開終了後、光合成活性の低下や、窒素量やクロロフィル量の減少が見られるが、このような変化を葉の老化という。葉の老化は、被陰されがちな古い葉から新しい葉へ窒素などを転流するために起きていると考えられる。生育光、栄養条件などの生育環境が異なると、上位葉や個体全体の成長が異なってくる。また、葉の老化のはやさも異なる。このとき、上位葉を被陰する処理(上部被陰)によって、無被陰の場合と比べて、上位葉の成長、下位葉の老化に伴った光合成活性などの変化がどのように影響を受けるのかを調べた。本研究では、インゲン(Phaseolus vulgaris)を人工気象室内で、光が約700 umolm-2 s-1という条件で、栄養供給がある条件で生育させた場合と、栄養供給がない条件で生育させた場合、また、温度は25℃と15℃という二つの条件、計4つの条件で種子から生育させた。栄養供給があるときには、上位葉の成長は上部被陰によって抑えられたが、栄養供給がないときには、上部被陰と無被陰の間に、上位葉の成長の大きな違いは見られなかった。また、大気中の二酸化炭素濃度、飽和光下での初生葉の葉面積あたりの光合成活性は、栄養供給がある場合には、上部被陰が長期にわたると上部被陰処理個体で若干高めの値になったが、栄養供給がない場合には、光合成活性に対する上部被陰の影響が現れにくかった。これは、もともと上位葉の成長が制限されているためであると考えられる。このような傾向は、二つの生育温度でともに見られた。これらの変化と、窒素量、光合成産物量などの変化をあわせ、葉の老化を上位葉の成長と関連させつつ議論したい。