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一般講演 P1-227

枝の位置による繁殖器官への転流パターンの違い

追立浩貴(大阪大・理) 宮坂仁(愛媛大・CMES) 中野伸一(愛媛大・農)

樹形の形成機構を理解するためには栄養成長と繁殖成長が樹冠内および枝内のどこ場所でどのように起こるのかを定量的に理解する必要がある。本研究では、一年枝上の各当年枝の位置がそれらの当年枝の伸長や繁殖パターンにどの程度影響するのかを検討し、位置の異なる当年枝由来の光合成産物の分配パターンを明らかにすることを目的とした。樹高13〜16mの落葉広葉樹コナラを用いて、一年枝上の当年枝を、一年枝頂芽由来の先端枝、側芽由来の側枝として区別した。さらに側枝を、偽輪生枝(一年枝の先端部に密集して配置される側枝)と下部枝(その他の側枝)とした。一年枝の乾重量と長さ、当年枝の各器官の乾重量、茎の基部直径と長さ、繁殖率を測定し、一年枝と当年枝の関係についても考察した。また、偽輪生枝のみに堅果をつける当年枝4本以上の一年枝系を対象に、先端枝のみ、もしくは偽輪生枝のみに炭素安定同位体を取り込ませて、それぞれ当年枝由来の光合成産物の転流について調べた。

同じ一年枝系内では、先端枝は側枝に比べ、総重量が大きく、葉重量あたりの茎重量も大きく、基部直径も同長の側枝と比べて大きかった。サイズの大きい一年枝系では当年枝の合計乾重量が大きく、先端枝よりも偽輪生枝や下部枝の繁殖率が高かった。炭素安定同位体を用いた実験では、偽輪生枝の光合成産物の多くは堅果に転流され、ほとんどが枝内にとどまっていたのに対し、先端枝の光合成産物の半分程度は偽輪生枝の堅果に転流されていた。このように先端枝の光合成産物の相当程度が先端枝の外に転流されていたが、同じ一年枝系の一年枝と先端枝の長さとの関係を調べると、両者はほぼ同じ長さであったことから、先端枝では自身の翌年の伸長を損なわない程度に、下部の堅果に資源が転流される可能性を示している。

以上の結果は、コナラの樹形形成における先端枝系の重要性を示している。

日本生態学会