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一般講演 P1-229

光環境計測における感光フィルムの使用可能範囲

*田代 直明(九州大・演習林), 小林 元(信州大・AFC)

感光フィルムを用いた光量の計測方法は、・フィルムが小さく軽量であるためサンプルの自然な状態での受光量が計測できる・計測期間中の実際の受光量が反映されるので瞬時値を用いる他の方法に比べ本質的である・安価であるため多点での計測が容易である − 等の利点があり、植物群落内の個葉における受光量など、局所的な生物の光環境を評価する上で有用性が高い。一方、・温度による感度の変化が大きい・暗いところでの褪色量が小さいため誤差が大きくなる − 等の問題がある。

温度による感度変化の問題は、異なるデータセット間の比較の際に重要となる。この問題を回避するために、データセットにつき1地点以上で電気的な光センサとロガーによるフィルムとの同時計測を行い、そのフィルムの褪色量と各地点のフィルムの褪色量との比にセンサによる計測値を乗じて、各地点の受光量を推定する方法がとられている。この方法の場合、もっとも明るい地点の褪色量が飽和に至ったとき、より暗い地点における褪色量が充分であるかどうかが、計測のダイナミックレンジを規定するが、その範囲は明らかでない。また、同じデータセット内の地点間における温度の差が、どの程度誤差をもたらすのかについても検討が必要である。

そこで本研究では、感度特性の異なる3種類の感光フィルム(オプトリーフO-1D, 同R-2D, 同Y-1W・大成イーアンドエル・東京)について、森林内の光環境の異なる複数地点で、フィルムの露光と同時にセンサによるPPFDの計測、および熱電対によるフィルム温度の計測を連続的に行い、また、インキュベータと人工照明を用いて温度と光量を制御した露光実験によって、より精密な温度-受光量-フィルム褪色量の関数を作成した。これらの結果から、野外での測定精度を確保するための使用条件について検討を行った。

日本生態学会