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一般講演 P1-233

乗鞍岳におけるハイマツの光合成の制限要因

*永野聡一郎(東邦大・院・理),中野隆志(山梨県・環境研),久保田光政(静岡大・農),池田武文(京都府大・農),丸田恵美子(東邦大・理)

中部山岳以北の森林限界以上に生育する常緑針葉樹ハイマツは、立地によって異なる生育型を示す。風背地に樹高の高い群落(80-120cm)が生じる一方、風衝地には矮生のハイマツ(20-40cm)が生育している。立地によって生育型の異なる群落が生じる原因として、風衝地では冬季の乾燥ストレスによる針葉の枯死が著しく、ハイマツは物質収支に不均衡が生じることを示した。また風衝地では、夏季にも土壌の乾燥を初めとする環境の劣化により光合成が抑制される可能性がある。そこで風衝地と風背地のハイマツの、夏季の光合成とその制限要因について明らかにするため、光合成・蒸散速度、木部圧ポテンシャル、光化学系II活性の日変化を測定し、気孔閉鎖を促す水収支の不均衡の要因としての、木部の水分通導性を測定した。

木部は、風衝地・風背地のハイマツとも春先にキャビテーションを生じていたが、夏に向かって回復し、生育期間中の水分通導阻害は認められなかった。降雨直後の晴天時、風衝地と風背地のハイマツの光合成に差はないが、晴天が続くと風衝地のハイマツは日中に木部圧ポテンシャルが低下し、気孔コンダクタンスが低下、光合成速度が低下した。このとき、葉内二酸化炭素濃度(Ci)は、風背地よりも風衝地のほうが高く維持していた。最適条件下で測定したA-Ci曲線から求めた炭酸固定反応の活性は、風衝地で著しく低い針葉が認められた。光合成速度に対する気孔閉鎖の影響は、酵素活性が低い葉ほど小さくなる。風衝地のハイマツにおける日中の気孔閉鎖は、光合成の反応基質としての葉内二酸化炭素濃度の減少を介して光合成速度の制限に作用せず、冬季にストレスを受けた針葉が、酵素活性低下のため、生育期間中の光合成を低下させていたと考えられる。

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