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一般講演 P1-235
西表島の前良川と後良川のマングローブ林の植生帯の構成樹種であるマヤプシキSonneratia alba,ヒルギダマシAvicennia marina,ヤエヤマヒルギRhizophora stylosa, オヒルギBruguiera gymnorrhizaの環境に対する応答の仕方を明らかにするために、植生帯の土壌の窒素環境と、葉の窒素再吸収率を測定し、どのように資源としての窒素を利用しているかを調べた。後良川では、マヤプシキ-ヒルギダマシ帯、ヤエヤマヒルギ帯、オヒルギ帯の3つのプロットを設置し、前良川では右岸にヒルギダマシ帯、ヤエヤマヒルギ帯、オヒルギ帯の3つ、左岸にマヤプシキ帯、ヤエヤマヒルギ-オヒルギ帯の2つを設置した。土壌は、各プロットから採土円筒管で採取し、この土のC/N比、全窒素量、アンモニウムイオンと硝酸イオンのN量を計測した。水環境については土を抜いた穴から染み出した水を採取し、pH、酸化還元電位、電気伝導度、土壌に吸着されていない状態のアンモニウムイオンと硝酸イオンのN量を計測した。葉は、各プロットで林冠に達している健康な個体を選び、生葉と、個体をゆすると落ちる程度に老化した葉を採取し、葉のC/N比、単位重量あたりの窒素量を計測した。落葉の際にどれだけ葉に投資した窒素量を回収するかを見るために、生葉と落葉について単位重量あたりに含まれる窒素の量を計測し、再吸収率=(生葉中の窒素量-落葉中の窒素量)/生葉中の窒素量×100 を計算した。この結果、陸側の植生帯ほど土壌に含まれる全窒素量は多くなる傾向が見られた。しかしオヒルギ帯は低い酸化還元電位を示しており、この状態は植物の利用可能な窒素態が限られていることが考えられる。葉の窒素再吸収率も、オヒルギ帯が最も高い値を示した。