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一般講演 P1-238

異なる光環境で生育させたアラカシとヒサカキの光合成特性

*石井義朗,佐川桜子(岡山大院環境),山田将司(岡山大農),坂本圭児,三木直子,吉川 賢(岡山大院環境)

林内に生育する稚樹は光環境の空間的異質性に対して様々な形で順応しており,その順応の仕方を明らかにすることは森林の動態を理解する上で重要である.本研究は,暖温帯2次林下層のさまざまな光条件に出現するアラカシとヒサカキを対象として,異なる光環境における順応の仕組みについて,光合成特性から検討した.測定には,実験的に異なる光条件(相対PPFD100%区,同10%区,同3%区(以下順に100%区,10%区,3%区))で3年間生育させたポット苗を用い,葉の形態,クロロフィル蛍光反応や葉の色素組成,および葉内窒素量や光合成の生化学的パラメータなどを調べた.

葉の形態は光環境に応じて異なり,両樹種ともに暗い処理区ほど面積が大きく薄い傾向があった.加えて,面積当りのクロロフィル量は高い値を示した.強光(PPFD1500μmol m-2 s-1)を照射してクロロフィル蛍光反応を測定した結果,100%区では酸化状態にある光化学系2(PS2)の割合が高く,一方でそうしたPS2の量子収率は低かった.この結果はキサントフィルサイクル色素の濃度と関係し,100%区で高い値を示した.以上の結果から,暗い環境では少ない光量を効率的に利用し,明るい環境では光エネルギーが過剰にならないように可塑的に応答することが分かった.光合成の生化学的パラメータを見ると,最大RuBPカルボキシル化速度は,アラカシでは10%区が高く,ヒサカキでは100%区が高い値を示した.最大電子伝達速度は,アラカシで処理区間に違いがなく,ヒサカキでは100%区が高かった.このように光合成の生化学的パラメータでは,光強度への応答が樹種間で異なった.この点を詳しく検討するため,葉内窒素量や光合成器官間の窒素分配特性などについて考察を行う.

日本生態学会