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一般講演 P1-239

ダケカンバの葉面積が林分蒸発散量の季節変動に与える影響

*山田雅仁(北大・低温研), Kamil Laska(Masaryk Univ), 中井太郎, 戸田求, 隅田明洋, 原登志彦(北大・低温研)

森林における水循環の評価は、森林のバイオマスの減少に伴って流域の河川流量が増加することが知られているため、防災という視点からも重要な研究課題である。しかし、自然界で発生する撹乱が森林の水循環に与える影響について調べた研究はまだ多くない。そこで森林の水循環のうち撹乱の影響を直接受ける蒸発散に焦点を当てて調査を行なった。本研究は、2005年と2006年に北方林の代表的な樹種の1つであるダケカンバ林において、小規模な撹乱によるダケカンバの葉面積の変化が林分蒸発散量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。

調査地は、北海道大学雨龍研究林の1973年に掻き起こしを行なった後自然更新したダケカンバが優占する二次林で、林床はチシマザサに覆われている。林分全体の蒸発散量はオープンパス法で測定した。ダケカンバの蒸散量はGranier法による観測と、毎木調査データから求めた。林床のチシマザサの蒸散量は熱収支法と、刈取りによる葉面積指数から算出した。またダケカンバの葉面積指数は、LAI-2000を使用して推定した。

2005年のダケカンバ林の葉面積指数は、2004年の台風18号のため強風による林分全体にわたる梢端の損傷の影響を受けたと見られ、生育期間を通して2004年及び2006年よりも顕著に小さかった。これを反映して2005年のダケカンバの蒸散量は2006年よりも低下したが、林床の日射量が増加したためチシマザサの蒸散量は増加した。一方林分蒸発散量は両年で差が見られなかった。つまり小規模な撹乱によって、ダケカンバとチシマザサの蒸散量が有意に変化したにもかかわらず、林分の蒸発散量は有意に変化しないことがわかった。

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