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一般講演 P1-242

中国毛烏素沙地に生育する樹木の水分生理特性

*山本牧子,玉井重信(鳥取大・乾地研),吉川賢,三木直子(岡山大・農),王林和(内蒙古農業大),山中典和(鳥取大・乾地研)

本研究では,中国内蒙古自治区毛烏素沙地において,異なる地下水位条件下で生育している樹木の水分生理特性をP-V曲線法によって明らかにし,各樹種の乾燥耐性と水分生理特性に及ぼす地下水位の影響を検討した。

調査は毛烏素沙地開発整治研究センター(38°57′〜59°01′N,109°02′〜109°17′E)内の西側と北側の2つの試験地で行った。調査木として,西側の試験地ではサリュウ(Salix psammophila C.Wang et Ch. Y. Yang ),ハンリュウ(S. matsudana Koidz.),ウリュウ(S. cheilophila Schneid.)のヤナギ属3種と,キク科のユウホウ(Artemisia ordosica Krasch),マメ科のカラガナ(Caragana korshinskii Kom.)を,北側の試験地ではユウホウとヒノキ科の臭柏(Sabina vulgaris Ant.)を選んだ。

P-V曲線によって求められた膨圧を失い初発原形質分離を起こす時の葉の水ポテンシャル(ψwtlp)と,十分吸水した時の浸透ポテンシャル(ψssat)は,サリュウとハンリュウで他の樹種より低い値を示し,乾燥に対する膨圧維持に有利な水分生理特性を持つ樹種であることが明らかになった。その他の樹種は乾燥に不利な水分生理特性を示していた。また,サリュウは硬い細胞壁を持っており,乾燥ストレス条件下での水分吸収に有利な樹種であると考えられた。反対に,臭柏では他の樹種より柔らかい細胞壁を持つことで,膨圧の維持を有利にしていることが示唆された。異なる地下水位に対する水分生理特性値は,ハンリュウで地下水位が高くなるに従って低い値を示したのに対し,その他の樹種では明らかな変化が認められなかった。

日本生態学会