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一般講演 P1-246

カラマツ壮齢林・幼齢林における連続分光観測とGPPの推定

*中路達郎, 井手玲子(国環研), 高木健太郎(北大), 小熊宏之(国環研)

植生の総一次生産量(GPP)を広域かつ連続的に評価するとき、植生表面の分光植生指標(VI)は有効な情報になり得る。本研究では、VIから群落のGPPを推定する方法として、(1)VIとGPPの関係を基にした直接推定法および(2)VIとLUEモデルパラメータ(FAPAR、e)の関係を用いた間接的な推定手法に着目し、林齢の異なるカラマツ林において4種類のVIの応答性を調査した。

研究は42-45年生のカラマツ壮齢林(北海道苫小牧)および4-5年生カラマツ幼齢林(北海道天塩、カラマツ−ササ混合群落)において行った。群落のCO2フラックスは渦相関法により計測し、樹冠の連続分光反射率は観測タワー(苫小牧40m、天塩30m)上から全天分光放射計によって連続計測した。観測期間は、カラマツの展葉から落葉までの1成長期とした。APAR、FAPARは林内の光量子計から算出し、eはGPP/APARとして算出した。VIは、植生のLAIやGreennessの指標であるNDVIとEVI、キサントフィルサイクルやPSIIと関連の強いPRI、葉内色素に関連するCCIの4種類を計算した。

晴天日の11-13時の平均値の季節変動を調査し、GPP・モデルパラメータとVIの関係を解析した。その結果、カラマツ壮齢林では、GPPとはEVIが最も高い相関を示し、FAPARおよびeはそれぞれNDVIとCCIと高い相関関係にあった。一方、カラマツ幼齢林では、GPPとFAPARは壮齢林と同じくEVI、NDVIと高い相関関係にあったが、eはCCIやPRIよりもNDVIでより高い相関関係にあった。eの推定に期待されるPRIはいずれの林地でもeと有意であったが、植生のタイプや被度によって応答性が変動することが明らかになった。(著者追加 三枝信子(産総研))

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