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一般講演 P2-001
水田-畑作地帯(栃木県思川流域)と集約的畜産地帯(栃木県那珂側上流域)で河川への窒素・リン酸の面源負荷量を推計した。河川水中の窒素・リン酸量は既存のデータベース・文献から1989-1999年の平均値とした。流域の形を旧市町村区界の境界で切り出し、人口、域内の農耕地と作目、作物生産量、家畜の飼養頭羽数は2000年農業センサスと2000年栃木県農業統計から求めた。國松と村岡(1989)から流域住民による河川への直接の負荷を求め、河川中の窒素・リン酸量から差し引くことで、面源負荷を推計した。三島ら(2003)のデータベース、定点調査結果、作物生産量から農業生産において発生する間接的な面源負荷となる過剰窒素・リン酸量を求めた。両水域とも流域面積に占める農耕地面積はc.17%である。思川を流れる窒素・リン酸量は年間それぞれ3,657Mg・268Mg、内人口由来の窒素・リン酸量は1,190Mg・229Mgであり、面源負荷由来の窒素・リン酸量は2,467Mg・38Mg、対して農業生産において過剰となる窒素・リン酸量は2,093Mg・2,951Mgであった。那珂川上流を流れる窒素・リン酸量は年間1,884Mg・114Mg、内人口由来の窒素・リン酸量は458Mg・88Mgであり、面源負荷由来の窒素・リン酸量は1,426Mg・26Mg、対して農業生産において過剰となる窒素・リン酸量は2,469Mg・4,203Mgであった。思川で面源負荷量が農業による過剰より多いのは、下水処理の不確かさ、過去の過剰な施肥の名残りであることが考えられる。那珂川では農業による過剰が思川より多いにもかかわらず河川への負荷が少ない可能性があることには、過剰の要因が思川では化学肥料が主体であるのに対し那珂川上流では家畜糞尿が主体で、ここ15年の間に急速に伸び非定常の状態にある事に由来すると考えられた。