| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P2-003
河川上流域においてシロザケ(Oncorhinchus keta Walbaum)が遡上産卵後河川内で死亡する秋には,流路内に多くのサケの死骸が見られる.死骸の一部は河川内で,一部はほ乳類などにより陸上に引き上げられて陸上で利用分解される.また、この時期は大量の落葉の分解が陸上や河川内で進行する.落葉とサケの死骸が同時に存在する場合,落葉の分解過程はサケから移行した養分に影響を受けると推察される.サケ死骸による落葉分解への影響は,落葉がサケに直接付着する場合,サケに付着した落葉がさらに別の落葉に付着する場合等に区分できる.本研究では,このようなサケ死骸養分の移行経路の違いが陸上および河川において落葉分解に与える影響を明らかにすることを目的としてリターバッグ法を用いた分解実験を行った. 1、落葉をサケの死骸に密着させる処理(直接移行),2、落葉に,サケの死骸に密着させた落葉を接する処理(葉を介した間接移行),3、対照処理を設け2004年10月から2005年8月までの10ヶ月間実験を行った.陸上では,実験開始190日目では処理間で落葉の分解量に違いは認められなかったが,190日目から266日目までの期間は2の処理の落葉が最も速く分解された.水中では,実験開始11日後から60日後までの落葉分解は2の処理が最も速かった.葉に定着した土壌動物は,実験開始190日目ではいずれの処理でもムラサキトビムシが個体数で90%以上を占めた.葉に定着した落葉摂食性底生動物にはオオエゾヨコエビ,フサオナシカワゲラ属,トビイロカゲロウ科が多く出現した.このうちオオエゾヨコエビは2の処理に多く定着していた.発表では,異なる処理間における落葉の分解過程の違いについて,落葉に定着した動物や処理ごとの落葉成分のデータを用いて考察を行う.