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一般講演 P2-004

根の呼吸速度の季節変化と日中低下

*別宮(坂田)有紀子(都留文科大学),坂田 剛(北里大学),中野隆志(山梨県環境科学研究所)

演者らはヒノキとミズナラの根の呼吸速度が日中低下する現象を発見し、昨年の新潟大会で報告した。本大会では、ヒノキとミズナラの根の呼吸速度の日変化およびその季節変化と、日中低下の頻度について報告する。根の呼吸測定には、山梨県鳴沢村青木が原付近のヒノキ・ツガ林内に生育するヒノキとミズナラの林冠木を用いた。根の呼吸測定は、Intactの状態、つまり根が植物体につながった状態で、LI-6400の土壌呼吸システムにルートチャンバーを接続しておこなった。2005年8月、9月、11月、2006年6月、7月に、Intactの根の呼吸速度を、夜明けから日没まで、あるいは24時間連続で測定した後、根をサンプリングして実験室に持ち帰り、通気法でdetachedの呼吸速度の温度依存性を測定した。

その結果、根の呼吸速度の日中低下は上記測定時期のいずれにも認められ、根の活動期間中には日中低下が普遍的に起こっている可能性が示唆された。また、明け方に根の呼吸速度が一時的に増大する現象が観察された。演者らは昨年の大会で、葉における蒸散速度と根の呼吸速度の間に相関関係があることを報告したが、これらを合せて考えると、野外で実際に生育している植物の根の呼吸速度の増減には、これまでに知られている温度だけでなく、気孔の開閉あるいは蒸散速度が大きく関わっている可能性が示唆された。

また、根の呼吸速度の日変化と合せて、土壌呼吸速度の日変化を測定した結果、地温の上昇にも関わらず土壌呼吸速度が一定あるいは低下する現象がやはり見られ、根の呼吸速度の日中低下が影響していると考えられた。

日本生態学会