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一般講演 P2-005
河川への落葉供給源として必要な河畔林幅を明らかにするため,以前の研究で,簡単な物理モデルによる落葉散布推定手法を提案した(阿部ほか,2006)。本研究では,データを追加して,モデルのさらなる検証を行った。
調査地(小川群落保護林)および調査対象木(左岸&右岸斜面上のクリ)は,以前と同じである。今回は,前回に設置した谷底部タワー(高さ13m)のほか,左右の斜面上にタワー(高さ4.3m)を1基ずつ追加して風の観測を行った。斜面上のタワーは,樹冠層まで届いていないが,谷底部タワーのデータを参考に,樹冠〜地表の風速分布を推定して計算に用いた。さらに,落葉散布については,以前は一方向のみの観測であったが,今回は調査木の根元から3方向にリタートラップを5〜10m間隔で配置し,クリ落葉を観測した。
クリ落葉は,以前と同様に,大部分が10〜15m以内に落下していた。モデルによる推定は,左岸側斜面では,1方向のみならず,3方向すべてにおいて,推定結果が観測データとよく合致した(樹冠近傍は除く)。前回,結果の芳しくなかった右岸側は,未だ満足のいく推定ではないものの,今回,斜面上の風速データを用いたことで,ある程度の改善が認められた。
以上,全体としてみると,本モデルの有効性は確かめられたといえる。なお,右岸側の推定がうまく行かない原因については,もう少し検討をおこなうつもりである。
参考文献: 阿部俊夫ほか (2006) 応用生態工学 8: 147-156.