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一般講演 P2-007

流域地形の違いがもたらす森林河川水質の空間分布

*柴田英昭(北海道大),徐小牛(北海道大),小川安紀子(地球研),吉岡崇仁(地球研)

森林生態系から流れ出す河川水に含まれる水質成分は、下流域や沿岸域の生態系に対する養分やエネルギー源の供給源として重要である。森林流域における河川水質は生態系の物質循環や水文過程の影響を受けながら形成されている。流域の地形構造は土壌水分や水文素過程と関連が深いといわれているものの、その影響程度については不明な点が多い。北海道北部の北海道大学雨龍研究林泥川流域におけるこれまでの研究では、河川水に含まれる硝酸濃度形成に流域の地形構造が密接に関係していることを明らかにしてきた。

本研究では、下流生態系への微量栄養として注目されている鉄を中心とした微量溶存金属(鉄、マンガン、アルミニウム)と、生態系へのエネルギー源としての溶存有機炭素(DOC)、溶存有機窒素成分(DON)に着目し、同一流域内の異なる支流間での溶存成分濃度の違いと流域地形(平均傾斜、流域面積)との関連について調べた。

2003年7〜12月までに毎月1回の頻度で、11支流の河川水について溶分成分濃度を分析し、各流域の地形構造と比較したところ、各流域における溶存全鉄(Fe)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、DOC濃度の平均値は流域平均傾斜との間にそれぞれ負の相関関係が認められた(p<0.01)。また、DOC濃度とFe、Mn、Al濃度の間には有意な正の相関関係が認められた。一方、硝酸態窒素濃度は平均傾斜との間に有意な正の相関関係が認められた。

これらの結果から、Fe、Mn、Alなどは傾斜が緩やかで土壌水分が豊富な地帯から溶存有機炭素とともに河川へ供給されていることが示唆された。このことは無機態窒素栄養である硝酸の挙動とは相反するものであった。したがって、上流域から下流へのさまざまな栄養物質の供給という観点からは、多様な地形構造をもつ支流域の存在が重要であることが示唆された。

日本生態学会