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一般講演 P2-015
近年、日本各地の里山でモウソウチク(以下竹)が拡大していることが報告されており、生物多様性の低下や生態系機能の変化が懸念され詳細な現状の把握が望まれている。生態系機能を生じる物質循環について、特に成長の制限になりやすい窒素循環の面から調査することで竹林生態系の特徴の一端が明らかになり、竹林拡大に伴う影響予測も可能になる。そこで本研究では竹の割合が異なる調査区を設定し、竹林化によって窒素循環機構がどのように変化するのかを明らかにすることを目的とした。
調査地は京都府と大阪府の境界に位置する天王山である。天王山では過去40年程度の間に竹林面積が2倍以上に増加している。標高約170~210mの地点に、竹林の侵入過程に沿って20×20mのプロットを4箇所設定した。胸高断面積中の竹の割合は0、20.4、69.1、99.9%であった。アロメトリーにより地上部、地下部の現存量を求め、各部位の窒素濃度と掛け合わせて窒素蓄積量を算出した。窒素の動態について、土壌の窒素無機化・硝化ポテンシャルをビン培養法で求めた。さらに、FH層、土壌深20cm下にイオン交換樹脂を埋設し、土壌中での窒素移動量を把握した。
竹林化とともに地上部の現存量・窒素蓄積量は減少したが、地下部は増加した。窒素無機化ポテンシャルにはプロット間で大きな違いは見られなかった。しかし硝化ポテンシャルはFH層において竹林化とともに高い値となり、FH層下への窒素流亡量も増加したが、系外への流亡量は少なくなった。竹林化に伴いFH層で硝化が進みやすくなるが、地下部の配分が増えることによって窒素の流亡が抑制されているものと考えられた。