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一般講演 P2-018

ススキ草原とアカマツ林の純一次生産量の比較

*木谷好希(筑波大・院・環境科学), 鞠子茂(筑波大・院・構造生命)

現在、遷移に伴う生態系炭素循環プロセスの変化が注目されている。とりわけ、草本期から木本期への遷移過程では、植生構造の顕著な変化が炭素循環プロセスに与える影響は大きいと考えられる。冷温帯では、ススキ草原からアカマツ林への移行に伴い、土壌呼吸量はほとんど変化しないが、土壌有機炭素量(SOC)は減少するという報告がなされている(勝野 2002)。SOCの増減は土壌への有機炭素のインプットとSOCの分解によるアウトプットとの差し引きによって決まるので、SOCの減少を解明するには、土壌への有機炭素供給量を決める純一次生産量(NPP)の分配を明らかにする必要がある。そこで、冷温帯の二次遷移系列であるススキ草原とアカマツ林のNPPを明らかにする研究を行った。

調査(2005-06)は長野県菅平高原実験センター内のススキ草原とアカマツ林で行った。このアカマツ林はススキ草原の刈取りを40年前に放棄して作られた森林である。ススキ草原の地上部と地下部のNPPは刈取り法とルートイングロース法を用いて測定した。アカマツ林地上部NPPは収穫法(毎木調査、アロメトリー式、リタートラップ)により、地下部NPPはルートイングロース法により推定した。調査の結果、ススキ草原地上部NPPが4.05 t C ha-1 yr-1、地下部NPPが2.53 t C ha-1 yr-1、アカマツ林地上部NPPが3.93 t C ha-1 yr-1、地下部NPPが2.19 t C ha-1 yr-1であった。以上より、アカマツ林で土壌炭素量が低下する原因の一つは地下部NPPの低下にあると考えられた。炭素動態プロセスは年々変動することが知られているので、同様の調査を複数年継続する必要がある。

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