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一般講演 P2-021

ダケカンバ林林床のチシマザサの炭素・水収支の推定と季節変化

*山口貴広,山田雅仁,戸田求,中井太郎,小野清美,(北大・低温研),植村滋(北大・フィールド科セ),隅田明洋,原登志彦(北大・低温研)

森林生態系のガス交換を評価するうえで、下層植生の影響はそのバイオマス量・LAIからみて無視できない。樹冠部と林床植生に分けて評価することは、森林生態系の物質循環を解明する上で重要である。また、林冠層の展葉・落葉に伴う林床の光環境の変動に伴い、林床植生によるガス交換の比率も季節変化すると考えられる。そこで本研究では、北海道北部のダケカンバ林において、林床のチシマザサ(Sasa kurilensis)の群落光合成・蒸散速度を推定し、林冠もあわせた林分全体のガス交換量に対する林床植生の影響とその季節変化について考察した。

チシマザサの季節ごとの個葉の光合成・蒸散速度・LAI・葉齢の割合・気象データから、林分のチシマザサ群落の月光合成・蒸散速度を推定した。各月の光合成速度の測定にはli-6400(LI-COR)を用いた。LAIは層別刈取り法により得た。群落光合成速度は、光−光合成曲線とLAI、気象データ(PAR)から推定した。群落蒸散速度は、気象データ(VPD)と光合成速度、気孔コンダクタンスから推定した。

2006年7月〜10月の各月の群落光合成速度は順に、0.76 ,0.69 ,0.70 ,1.33 tonCO2ha-1、蒸散速度は5.56 ,3.57 ,3.09 ,5.73 mmと推定され、光合成・蒸散共に林床の光環境が改善する樹冠の落葉後において最大値を示した。また、同調査地で測定されているチシマザサの樹液流速度から推定した日蒸散速度のデータと高い相関を示した(R2=0.87)ことから、個葉の光合成速度とLAI、気象データから、かなりの精度で群落光合成・蒸散速度を推定できることが示された。

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