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一般講演 P2-022

二次遷移初期の冷温帯落葉広葉樹林における生態学的手法を用いた炭素動態の解明

*志津庸子, 曽出信宏, 李美善, 西脇愛, 車戸憲二, 小泉博(岐阜大・流域研究センター)

地球温暖化問題が深刻化する中、森林生態系の二酸化炭素の吸収能が着目されている。しかし、森林生態系の炭素収支は落葉性や常緑性といった森林タイプや遷移段階などにより異なり、必ずしも二酸化炭素の吸収源としてではなく放出源として作用することもある。近年、様々な森林タイプや遷移段階で炭素収支の研究が行われてきたが、二次遷移初期の落葉広葉樹林における炭素収支に関する知見は十分ではない。この期間は森林構造が大きく変化するため、そこで得られる知見は森林動態と炭素収支との関係に関する新たな理解をもたらすと考えられる。そこで本研究は伐採後7年経過した落葉広葉樹林の炭素の動態や収支を明らかにすることを目的とし、岐阜県高山市郊外(標高1450m)において2004年6月〜2006年11月に調査を行った。この林分はウワミズザクラ、ノリウツギ、ダケカンバなどが優占する。

調査区内の炭素収支の推定は生態学的手法により行った。生態系への炭素の移入量として純一次生産量(NPP)を推定するために地上部・地下部バイオマスとリターフォール量を測定した。炭素の移出量として土壌呼吸速度(SR)の測定を行い、また根呼吸量(RR)と従属栄養生物呼吸量(HR)を推定した。これらの値に基づき、NPPと生態系純生産量(NEP)を推定した。

NPPは2005年(344.2 gCm-2yr-1)から2006年(522.2 gCm-2yr-1)にかけて1.5倍増加した。年間土壌呼吸量は2005年、2006年ともに約1000 gCm-2yr-1であった。NEPは2005年が−423.6 gCm-2yr-1、2006年が−196.4 gCm-2yr-1)とマイナスの値を示し、この林分は炭素の放出源として作用していることが示唆された。

日本生態学会