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一般講演 P2-029

選択的呼吸抑制法による土壌の糸状菌と細菌の呼吸割合

喜多智(東農工大・院・農),Cahyono Agus(Gadjah Mada University), 戸田浩人, 生原喜久雄(東農工大・院・農)

根を除いた土壌呼吸の80〜99%が土壌微生物によるといわれている。森林土壌において微生物の呼吸のうち糸状菌が63〜80%を占めるという推定があるが、糸状菌と細菌それぞれの呼吸割合に関しては不明な点が多く、特に火山灰の影響を受けた褐色森林土壌や風化の進んだ熱帯林土壌での研究は進んでいない。糸状菌と細菌では、有機物分解に対する特性も異なり、それらの呼吸割合(F:B)を明らかにすることで、土壌の有機物分解系における微生物の役割について有用な知見を得ることができる。

本研究では、糸状菌(真核生物)阻害剤と、細菌(原核生物)阻害剤を用いて呼吸を抑制し、それぞれの呼吸抑制率からF:Bを求め(選択的呼吸抑制法)、さらにF:Bと微生物活性や土壌の化学的性質との関係を考察した。

褐色森林土壌の調査地は群馬県みどり市東町、東京農工大FM草木内で斜面下部から上部にかけて、スギ区、ヒノキ下区、ヒノキ上区、アカマツ区およびヒノキ上区に隣接した広葉樹区である。風化の進んだ熱帯林土壌の調査地は、インドネシア東カリマンタンで、天然林、択伐二次林、人工林、山火事跡の低木林、アランアラン荒廃草原である。

両調査地のF:Bは0.4〜0.9であり、数例報告のあるヨーロッパの森林や耕地土壌より、細菌の呼吸割合が高い土壌であった。褐色森林土壌では、斜面下部のスギで細菌の呼吸が優占し、斜面上部で糸状菌の呼吸割合が増加した。熱帯林土壌では、F:Bは天然林>択伐林>人工林≒低木林≒アラン草原となった。C/Nの高い木質系有機物の供給が糸状菌の呼吸に影響を及ぼしていることが示唆された。

発表ではさらに、既往の報告も含めて、F:Bと微生物活性や土壌の化学的性質との関係を考察する。

日本生態学会