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一般講演 P2-032

山地源頭渓流における土石流発生履歴と底生動物群集、落葉破砕の関係

*小林草平,五味高志(京大防災研),根岸淳二郎(自然共生研)

山地源頭部において森林伐採と土石流発生は渓流生態系の重要な撹乱である。撹乱は陸域から渓流への有機物供給や渓流内での滞留・分解プロセスを通して、渓流の有機物動態を大きく変えうる。しかし、こうした撹乱による有機物動態の変化の度合い、影響の時空間的拡がりについての知見は少ない。本研究は奈良県十津川村の山地源頭部において、林齢および土石流発生履歴の異なる9渓流を対象に、落葉破砕速度と底生動物群集を調査し、また、流下微細有機物量と落葉破砕速度の対応を検討した。2006年春と秋の2回、各渓流にリターバッグ(ハンノキ落葉6g)を複数設置し、10-14日後の落葉重量減少と底生動物群集を分析した。渓流間で平均重量減少は10-70%とばらついた。いずれの季節でも破砕速度は、近年土石流なし(>30年)の5渓流(いずれも若齢と高齢林)の方が、近年土石流あり(<20年)の4渓流(いずれも中齢林)よりも大きかった。また、前者の渓流では、ニッポンヨコエビが高密度に生息し、オオカクツツトビケラも多く、密度の高い渓流ほど破砕は速かった。後者の渓流では、ニッポンヨコエビは全く出現せず、低密度ながらオナシカワゲラ属とヤマガタトビイロトビケラが優占した。土石流による撹乱は、源流で高密度に生息する底生動物を排除し、撹乱後初期には分散能力の高い分類群は定着するが低密度であり、源流の破砕速度の回復には撹乱後長期(20-30年)要する可能性が示唆された。2005年の調査から、近年土石流ありの渓流では、流下有機物は季節を通して量的に少なく、落葉よりも藻類由来の物質を多く含むことが示唆されている。土石流による撹乱は、渓流内での破砕プロセスによる微細有機物生産を低下させ、微細粒子の形での下流への有機物輸送を低下させていることが考えられる。

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