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一般講演 P2-033
陸上生態系において、土壌は大きな炭素の貯蔵庫の役割を果たしている。土壌呼吸は、炭素循環の中では最も大きな放出の系であるとされ、多くの研究が行われている。温帯における土壌呼吸は地温との相関が高く、年間の炭素放出量の推定には地温が用いられることがほとんどである。本研究では、地上部植生が異なると土壌呼吸速度と地温の関係はどのように異なるのかを明らかにすることを目的とし、日本の4つの異なる生態系における土壌呼吸速度と温度依存性について検討を行った。
調査は、秋田県男鹿市寒風山のシバ草原と山梨県富士吉田市のアカマツ林、岐阜県高山市岐阜大学流域圏科学研究センターのミズナラ林とカラマツ林において行った。測定項目は、密閉法による土壌呼吸速度と地温、土壌水分である(n=18~30)。これらの調査地は、標高などの違いによって年平均気温は7.2〜10.7度である。
調査の結果、土壌呼吸速度と相関の高い地温の深さが生態系によって異なっていた。シバ草原とミズナラ林では深さ1cm、アカマツ林では5cm、カラマツ林では10cmであった。年間の最低地温は、どのサイトにおいても0度前後であったが、最高地温は森林サイトでは20度前後であるのに対して、シバ草原では30度と高温に達した。地温が10度の時の土壌呼吸速度(R10)は、ミズナラ、カラマツ、アカマツ、シバ草原においてそれぞれ、203、263、187、140 mg CO2 m-2 h-1であった。また、Q10 の値は、2.1〜2.8とサイト間での差は大きくないことが明らかになった。