| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-038

生態系改変者としてのミミズの機能―重金属に対する生態学的可塑性の検討―

*藤井芳一, 金子信博(横国大院・環境情報)

土壌汚染の生物・生態影響を考えるにあたり、汚染物質の土壌中での挙動を把握することが重要である。OECDやISOなどで、単一生物に対する単一汚染物質下における毒性試験法が提案されているが、実際の環境中では多くの生物・物質が共存しており、これらは何らかの相互作用が存在すると考えられる。例えば、ある生物の存在によって、汚染物質が動きやすくなり、その他の生物に影響を及ぼしやすくなることがあるかもしれない。また、土壌生物を捕食するような鳥類にとっては、土壌生物の体内に汚染物質が蓄積していると、直接汚染土壌に触れることがなくても土壌汚染の影響が及ぶことになる。ここでは、このような事象も含めて汚染物質の挙動と捉え、その時点の環境影響とともに生物の影響を介して起こりうる汚染物質の挙動の変化(生態学的可塑性)を検討した。土壌中において特にその物理的影響力の大きさから、生態系改変者とも言われるミミズが、重金属の挙動を左右する役割を果たすのかどうかを、環境制御室であるアーストロンを用いて実験を行なった。つまり、銅を加えた土壌において汚染後1ヶ月の間に、シマミミズ(Eisenia fetida)の存在の有無によって銅の画分の変化に違いが見られるかを検討した。画分の測定は、Tessier et al.(1979)を参考にし、連続分画抽出を実施した。また、補足的に、野外の主にミミズ由来と思われる団粒の有無による画分の違いについても検討した。土壌がミミズの腸内を通過する過程において化学的変化が生じ、糞として排泄された土壌は摂食前の化学形態とは異なるものと考えられる。画分の構成の結果を中心として、土壌pHやシマミミズの体内重金属濃度などとともに、ミミズの機能としての生態学的可塑性について報告を行なう。

日本生態学会