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一般講演 P2-039

放射性炭素同位体(14C)を用いた、土壌圏炭素の平均滞留時間の推定

*大塚俊之(茨城大・理)・内田昌男(海洋研究開発機構)・近藤美由紀(岐阜大・流圏センター)・村山昌平(産総研)・松田あゆり(環境研)・安立美奈子・白戸康人(農環研)・米田穣・柴田康行(環境研)

土壌はどれだけの量の炭素をどれだけの期間にわたって蓄積できるのだろうか。微気象学的研究が温帯性落葉広葉樹林のCO2シンクとしての役割を明確にした一方で、岐阜大学・高山サイトでの生態学的研究は粗大有機物や土壌有機物などの枯死体有機物に炭素が主に蓄積することを示した。このことは、土壌圏炭素(SOC)の循環プロセスを明らかにすることが、最も重要な課題の一つであることを意味している。本研究では、SOC動態を研究するための新たなツールとしての放射性炭素同位体(14C)の利用について焦点を当て、詳細な炭素循環研究が先行している高山サイトにおいてSOCの平均滞留時間を推定することを目的とした。

植物によって固定された有機物のΔ14Cは、その時の大気と等しく、その後半減期5730年で減少する。近年の加速器質量分析計(AMS)の進歩によって、土壌内で複雑な有機マトリクスを形成しているSOCの、高精度の年代決定と詳細な滞留時間の推定が可能になった。本研究では高山サイトにおいて深さ別に土壌をサンプリングし、比重選別(2 g cm-3)を行った後にAMSにより土壌有機物のΔ14Cを測定した。B層(80cm)までの総炭素量は、26.2 kgC m-2に達した。LH層を除いた表層10 cmまでのすべての有機物はΔ14C>100‰であった。これは、最近40年程度に蓄積した若い有機物であり(bomb C = 4.5 kgC m-2)、総炭素量の17%を占めた。15cm以下の深度ではすべての有機物はΔ14C<0‰であり、14C崩壊が起こるのに十分なくらい有機物が土壌中に滞留していたことを示した。さらに平衡モデルを用いて、SOCの平均滞留時間を計算した。

日本生態学会