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一般講演 P2-040

富士北麓冷温帯アカマツ林における土壌圏炭素動態

*根岸正弥(茨城大・理・生態),安立美奈子(農環研),山口貴広(北大・低温研),高橋健太,大塚俊之(茨城大・理・生態)

陸上生態系の炭素収支を解明するために重要な項目の一つとして土壌呼吸の分離があげられる。土壌呼吸(SR)は、呼吸基質が異なる根呼吸(RR)と従属栄養生物呼吸(HR)の大きく二つに分けられる。SRの分離は、土壌権圏炭素動態の解明には不可欠である。本調査は、溶岩流上の未熟な土壌(平均深度10.3cm)をもつ森林生態系にてSRをRR(細根呼吸+太根呼吸)、HRに分離し、土壌有機炭素(SOC)蓄積量の解明を目的とした。

調査は山梨県富士吉田市の剣丸尾溶岩流上に発達する97年生アカマツ林(標高1030m)にて行った。SRの測定は、06年の4〜12月に月1回、林内20箇所でLi-6200を用いて行った。RRの温度依存性は12月に根を切り出し、水で洗い通気法で測定した。根のバイオマスは6月〜11月に各月5〜15箇所にてランダムに10×10cmの枠をとり、枠内の根を含む土壌を全て取り出し、細根(φ2mm以下)と太根に分けた。RR測定の結果と地温から細根と太根の呼吸量を推定し、SRからRRを差し引いた値をHRとした。

SRは79.5(2月)〜685.2(8月)mg CO2m-2h-1と変動し、年間に6.9ton ha-1の炭素放出量が推定された。根のバイオマスは1m2に細根が370g、太根が1051g存在した。その分布は、深度5cm以下の下層に多く分布し、根全体の73%が存在していた。RRを測定した結果、RRはSRの48%(細根37%、太根11%)、HRは52%と推定され、その変動はRR、HRがそれぞれ96.8(2月)〜194.1(8月)、0〜491.1mg CO2m-2h-1であった。RRの季節変化に対してHRの大きな変動が示唆された。この結果とリターフォール量、地下部枯死量からSOC蓄積量の推定を行った。

日本生態学会