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一般講演 P2-042

コクワガタ幼虫による腐朽材の炭素・窒素利用

*棚橋薫彦(東大・農)

枯死材は森林において大きなバイオマスを占める.枯死材の分解過程における炭素・窒素の動態を明らかにすることは,森林の物質循環の理解に大きく寄与するだろう.枯死材の分解には,木材腐朽菌による腐朽に加えて,これに穿孔して破砕する穿孔性昆虫の働きが極めて重要であり,中でもコクワガタはその代表的な種である.本研究では,コクワガタ幼虫に白色腐朽材粉末を与えて実験室で飼育し,腐朽材と糞に含まれる炭素・窒素化合物を熱水可溶性成分,熱水には不溶だがアルカリで可溶となる成分(以降「アルカリ可溶性成分」),およびアルカリ不溶性成分に分けて,腐朽材と糞の間での各成分の比率の変化を調べ,コクワガタ幼虫が利用する腐朽材の炭素および窒素の形態について考察した.

炭素・窒素を含めた全物質量については,アルカリ可溶性物質が減少し,アルカリ不溶性物質が増加した.全炭素含有率は僅かに減少したが,アルカリ不溶性炭素は逆に増加する傾向があった.全窒素含有率は大きく減少し.熱水可溶性とアルカリ可溶性の窒素含有率は減少したが,アルカリ不溶性の窒素含有率には変化がなかった.これらの結果から,コクワガタ幼虫は腐朽材中の熱水可溶性成分およびアルカリ可溶性成分の窒素を主に利用することが示唆された.

また,野外で採取されたサンプルについても同様の分析を行ったので,実験室の結果と併せて発表する.

日本生態学会