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一般講演 P2-045

北方林における土壌-大気間の温室効果ガスのフラックスとそれに関わる微生物の群集構造(2)

*堤 正純,小島 久弥(北大・低温研),植村 滋(北大・北方生物圏フィールド科学センター),山田 雅仁,隅田 明洋,原 登志彦,福井 学(北大・低温研)

北方林は地球温暖化の影響を最も強く受ける生態系の一つと考えられており、北方林における温室効果ガスの動態を理解することは重要な課題である。森林においては、CO2は土壌中の生物により土壌から大気へ放出され、CH4はメタン酸化細菌(MOB)により大気から土壌へ吸収されている。これらの炭素フラックスを土壌微生物の群集構造と結びつけた研究は極めて少ない。そこで本研究は、北方林の異なる植生の森林における土壌-大気間の炭素フラックスと土壌微生物の群集構造の関連性を調べることを目的とした。調査は北大雨龍研究林で行い、針広混交林、ミズナラ林およびダケカンバ林(ササ保持区とササ除去区)の4つの植生調査区を設けた。針広混交林およびミズナラ林の林床にはクマイザサが、ダケカンバ林ササ保持区にはチシマザサが繁茂している。2005年および2006年に各調査区において、CO2およびCH4フラックスをクローズドチャンバー法により測定し、土壌微生物の群集構造は土壌より抽出した鋳型DNAを用いて変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(PCR-DGGE)法により決定した。CO2放出速度は4つの調査区間で明確な差異は見られなかった。一方、CH4吸収速度はダケカンバ林ササ除去区において他の調査区に比べて明らかに高い値を示した。全バクテリアの群集構造は調査区間で明確な差異は見られなかった。一方、MOBの群集構造は針広混交林とミズナラ林では共通していたが、ダケカンバ林とは明確な差異が見られた。ササ除去区においてはササ保持区に比べ明らかに多様性が高かった。以上のことから、本研究を行った研究林においては林床の植生の違いはCH4吸収速度やMOB群集へ大きな影響を及ぼすことが示唆された。

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