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一般講演 P2-047

アラスカウェットセッジにおけるメタン放出量とその安定同位体比

*鈴木希実(東工大・総理工),木庭啓介(農工大・農),松井洋平(OSU・Dept. Geological Sciences),保原達(酪農学園大・環境システム),Shaver R. Gaius,Giblin Anne(MBL・The Ecosystems Center),山田桂大(東工大・総理工),吉田尚弘(東工大・フロンティア)

温暖化に対し敏感に反応するであろう北極圏生態系の影響下にある北極圏土壌からのメタン放出量の推移は温暖化の予測に際し重要な意義を持つ。何故ならば、北極圏土壌は、現在でも対流圏メタン最大の放出源である全還元的土壌の13%を占め、かつ高いメタン放出ポテンシャルを持つと考えられるからである。そこで本研究では、温暖化予測の確度向上を視野に入れ、長年に渡る環境要因の操作に対する生態系の反応が北極圏土壌からのメタン放出に与える影響を明らかにすることを目的として研究を行った。

研究サイトは米国アラスカ州にあり、過去約20年間に渡り何も手を加えない対象域、リン・窒素肥料の施肥を行う施肥域、温室を建てる温室域と、区画ごとの環境操作に対する生態系の反応が観察されており、施肥域では生態系呼吸・生産の増加、土壌表層の酸化的環境への移行、土壌表層の地温下降が、また温室域では土壌表層の地温上昇などが確認されている。

土壌から放出されるメタンの放出量に関しては、各区画内の空間的異質性の高さから、統計的に有意義な環境操作による差は得られなかった。しかし、安定同位体比からは、各区画間の土壌中でのメタン生成・消費の割合が変化していることが示唆された。即ち、現時点では各区画からのメタン放出量に統計的な差異は認められないが、放出されるメタンの履歴は各区画で異なってきていると考えられる。よって、今後はメタン放出量自体にも区画間での差異が観察されるようになる可能性があり、更に長期的な観察を行うことが求められる。

日本生態学会